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【第1回】企業内のリーダー・指導員インタビュー「MSD株式会社 総務部門 弦巻志保さん」

第1回 リーダ-・指導員インタビュー|障害者雇用を推進される企業のご担当者|社内・社外のネットワークを広げて、いろんな方との交流を。

着任当初は不安いっぱいだったそうですが、障害関連の知識習得だけでなく、その人個人を理解するという姿勢で指導に取り組まれている弦巻さんにお話を伺いました。

着任当初は、「頭でっかち」な状態

現在の業務について教えてください
都内の外資系の製薬会社の総務部内で、障害者の軽作業チーム「お助け隊」の指導員をしています。知的障害の方16名と身体障害の方2名の18名の社員がいて、3名の指導員の一人として、5名の社員を担当しています。

現職に就かれて、何年目になりますか?
2019年6月でちょうど1年半になります。

現職に就かれたきっかけについてお話ください
同じ会社の総務で仕事をしていたので、「お助け隊」のことは知っていて、興味深い仕事だなと思っていました。私自身、仕事を通して社会と繋がっていきたい、仕事への納得感が欲しいと思っていたこともあり、前任者が定年退職し後任を探すタイミングに、手をあげました。

着任当初、困ったことはなんですか?
就く前には、いろいろな障害の特性理解も乏しく、一緒に働く上でどんな配慮が必要か、どんなトラブルがあるのかが分からなかったので、先輩方の資料を見せてもらったりしていましたが、見れば見るほど聞いたことがない障害名や、状況があり、情報ボリュームが大きくなって、頭でっかちな状態でした。

知的障害の社員と接しても、あまり戸惑うことはなかったのですね?
実際の現場では、その方々の苦手な部分に対して、理論を当てはめて考えるのではなく、その人個人をみて、この人はこれが苦手なのだなと消化することができました。もちろん、意思疎通がうまくいかないこともありました。言ったことが思ったように伝わらないなどの状況は今でもたくさんあります。そんな時には「言い手の粗相」と思って工夫するように心がけています。
指導の中で気をつけようと思ったことは、認知の違いでうっかりミスではないレベルのこともあると気がついたのでフィードバックの方法は工夫が必要だと思いました。障害者に限らずそうだと思いますが、理解度合いは千差万別ですし、特性上の問題など、そのギャップは本人にもストレスになってしまいやすいので、そこを焦らないようにしたいと思っています。実際には慌ただしい日々の業務の中では私がうまくできていないことが多いです。

最初に思っていたことと、実際に働いてみて、どのような違いを感じましたか?
彼らは、びっくりするほど、いろいろなものを処理していると思いました。細かい規則やルール、決められた時間の中でたくさんの量をこなし、協力し合って作業をしていてすごいなと純粋に思いました。

職場の中で、ご自身で工夫されたことなどについて教えてください
最初は諸先輩方からメンバーの職場内外でのそれぞれの様子を教えてもらいました。また、職場外の活動も大変勉強になりました。セミナーや他社での勉強会、大学の特別聴講などに行きました。早めに障害者職業生活相談員を受講させてもらったのも参考になりました。また、ボランティア活動を通じて、いろいろな障害の方と接し、知的障害の方のご家族や福祉関係の方とお話するなかでそれぞれの視点や不安を知ることができました。

インタビュー|障害者雇用を推進される企業のご担当者

事務作業中

職場で、一番印象に残っていることは何ですか?
信頼関係の中で成長が見られたことですね。最初は警戒もされていましたし、緊張で目も見てくれなかったです。「これをやってみない?」と言っても、「難しいからできません」と頑なに断られたのですが、簡単なことから少しずつ試してもらい、今ではいろいろ手伝ってもらっています。それをきっかけに、どんどん成長し、本人も実感している方が多いです。もともとできる人だったのに、いろんな制限がかかっていたり、やってはいけないとブレーキがかかっていたりしただけなのでしょうけど。
また、アンガーマネジメントや社会性の部分とか、少しアドバイスするとみなさん、すごく反応がよくて一生懸命取り組んでくれています。

働きやすい職場を一緒につくりたい

弦巻さんの指導を拝見していると、常に次のことをリクエストしていらっしゃいますよね。
「ここまでできればいい」ではなくて、一つのことができると、次のことへの働きかけいが多いと感じています

そうですね。できる人には挑戦し続けてもらいたいので、指示出しが激しいと感じているかもしれません。モチベーションの高い方とか、チャンスを求める人には適宜、ほどよい過程で渡していきたいと思っています。
新しいことにチャレンジして、成功するというサイクルなのだと思いますが、意欲的な人も多いので私自身も感化されます。中には、ついていくのが難しい方もいると思うので、そこは本人の状況をみて、安定を提供することは必要だと思います。
障害のある方は、特に知的障害の方は、「変化に対応できない」という事前情報が着任当初私にインプットされていて、新しいことお願いしたり、環境を変えたりすることが彼らにとって負担になるのかと思っていました。しかし、実際にコミュニケーションをとってみると、ものすごく自由にリラックスして業務をしている方もいて、もう少しステップアップできるのかもと思いました。緊張している環境下では変化があると大変なのでしょうけど、勤務年数も長く、社内の保たれた平和の中では、ある程度のことは対応できていたので、一概に言われている障害特性に縛られないように丁寧に個人を見ていこうと思いました。

事前情報に当てはめるのではなく、その人を見ていくことが大事ということですね。
安心した職場の中でチャレンジできるのはいいですね。日頃、心がけていらっしゃることはなんですか?

私自身、頭ごなしに怒ったり、ミスジャッジしたりするなど、いろんなことがあり、最初は、きちんとした人でいなければいけないと思っていたのですが、すべてできるわけはなく、よくよく考えたら、彼らもいろんな人と接して成長していくし、指導員も学校の先生も大人たちもいろんな人がいるので、自然な働きやすさを一緒に求めていける状態になれたらいいなと思っています。
ベースとなるコンプライアンスや尊厳のことは、一番に守らなければいけないことですが、不安をあおりすぎないように、理解してもらいやすい表現で伝えていきたいです。またビジネスという意識は持っていただきたいので、会社からはこういうことが求められているのですよ、ということは率直に伝えています。

今後の取り組みについて、考えていらっしゃることを教えてください
現在、ユーザーからの受注の進捗管理は指導員がやっていますが、ノーマライズの観点から関わる社員の方の理解を得て、可能な限り直接やり取りをしていただけるようなチームにしたいです。
そのためには、ジョブコーチの基本のような概要を一般の社員の方にも理解してもらう必要があります。そのスキーム作りも私たちの役割かなと考えています。そこが今後の課題です。

支援機関とは風通しのいい関係が望ましい

支援機関についてお聴きします。着任されたときはご存知でしたか?
社内の資料や勉強会などで支援機関の存在は知っていましたが、福祉制度や支援のすみわけとかはわからないので、どこに、どこまで依頼できるのかわかりませんでした。今でもわからないことばかりです。当初、支援機関は困った事や生活面全部をやってくれてしかるべきだと思ったりもしていました(笑)。
でも、困っている問題を単一に“生活面は支援機関”と切り分けてしまうと、うまくいかないのだなと早めに気づきました。企業も支援機関も、それぞれができる範囲で、できることをやることが必要だと思います。

インタビュー|障害者雇用を推進される企業のご担当者

インタビュー時の様子

支援機関とは、どのような関係が望ましいですか?
支援機関は、利用者の支援だけでなく指導員を含めた環境全体を包括的に支援してくれているのだなと思っています。こちらの困り事に対し、何かしらのアドバイスや、他企業の見学の紹介、「こうあったらいよね」というような、ナレッジの共有ができ、気軽に尋ねられる現在のような関係がありがたいです。
以前、問題が発生した時のカンファレンスの際、支援機関の方が「申し訳なかった」と本人の代理で謝罪をしてくださったのですが、社員を支援する立場としては一緒なので、支援機関は責任を感じる必要はないのでは、と思いました。もっと風通しの良い関係でいたいと感じ、コミュニケーションが足りなかったのかと、同時にこちらも反省しました。

これから、現場に就かれる方にアドバイスをお願いします
この仕事を開始した時の自分を振り返ると、やはり不安が大きかったです。今も何が正解かという点では明快な答えを持っていませんが、偏った経験則、自分が思う常識では処理できないことなどが大いにあることを前提に、謙虚に誠実に学んでいく必要があると思っています。
一方で、障害のある方も私自身も、皆個性をもつ「人」なので、指導方法やアプローチはいろんなやり方があり、「こうあるべき」と決め切らないほうがいいのではないかと思っています。その人を理解する、個別の様子を理解するほうがいいのかなと思います。

この仕事を通して他社の諸先輩方からのアドバイスやサポートを惜しみなくいただきました。通常であれば競合相手のような企業の方でも、ネットワークを大事にしてくださるのも、この仕事のおもしろい側面だと思っています。問題や不安を一人で解決していくのは大変ですから、一人で抱え込まずにいろんな方からサポートしてもらうのがいいと思います。社内・社外のネットワークを広げて、いろんな方と交流していただきたいと思います。

  • 取材日 2019年5月20日
  • 取材者 特定非営利活動法人WEL’S 筒井/秋山

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